おしらせ

COMICHI石巻 視察 11/26

11/26(土)、沿岸地域の中でも独自の復興が進められている石巻中心市街地と
その中にある住商複合施設『COMICHI石巻』を、つなセン会員等総勢23名で視
察してきました。

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また、この日は、『COMICHI石巻』の事業コーディネートを務めた合同会社住
まい・まちづくりデザインワークス代表野田明宏氏、シェアハウス運営事業者の
合同会社巻組社長渡邊享子氏にお話を伺いました。

まずは、JR石巻駅前からCOMIHI石巻までまち歩き。古くからの商店街がい
つもあり、震災前は高齢化や人口減少などによりシャッターを閉める商店が
年々
増えている状態でしたが、最近は、地元の若者を中にI・Uターン者によ
り数々
のコミュニティ拠点が生まれています。

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児童館や集会スペースをはじめ、NPO法人や企業の事務所兼カフェ、ボランティ
アで訪れる人・転居して来た人のための滞在・宿泊施設やそのワーキン
グ拠点、
貸出も行える無人の図書館とコミュニティ拠点のタイプや形態も多
様です。

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新築もありますが、そのほとんどが古い建物を改修しているため、親しみやすい
商店街のスケール感は生かしつつ、再開した商店とコミュニティ拠点ら
による新
しい賑わいの見られるエリアとなっています。

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本題のCOMICHI石巻は、2015年8月に竣工した石巻の中心市街地内、歴史ある
松川横丁沿道で3.11により全壊判定など被害を受けた4名の権利者により『小規
模な住商複合建物の建築』、『地域を巻き込んだマネジメントスキームの構築』
を行った共同再建プロジェクトです。

1階にはテナントを設け募集により飲食店が3軒入っており、2~3階には従前居住
者用住居2戸と権利者による賃貸住戸である最大7名までのシェアハウ『COMICHI
の家』があります。

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シェアハウスのターゲットを30代にすることで、I・Uターン者の長期滞在を可
能にするだけでなく、周辺住民に多い高齢者世代とのまちなかでの多世代交流の
場にもなりつつあります。また計画実現には2つの重要なプロセスがありました。

1つ目は権利者同士のコミュニケーションと土地利用に対する意識の変化です。
震災をきっかけに権利者同士は助け合う関係性に変化したこと、そして権利者の
「復興後も継続したまちづくりを担ってくれるであろう若者たちに土地の利用を
提供したい」という想いから計画が動き出したのです。

2つ目はまちを巻き込む事業計画にしたことです。事業コーディネートを実施し
た東工大真野研究室(アドバイザー)、LLC巻組(事務局)、LLC SMDW (コ
ンサルタント)と権利者、テナント入居希望者、周辺住民、支援組合とのWSを重
ね、実施したいアクティビティの創出や空間づくりと同時に計画を共同で実施・
維持することのメリットを参加者に理解してもらったことで携わった人たちの意
識にも変化が生まれ、まちに受け入れられる存在になったのだと感じました。

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そして持続的に人が集う、動き続ける場をつくるための仕掛けについてです。地
域に開いた場として継続するため、運営組織として合同会社MYラボを立ち上げ、
その社員である出資者は従前事業者だけでなく商店街やまちづくり団体も加わっ
た形態となっています。

またMYラボを1階テナントオーナーとすることで賃貸収入を原資にCOMICHIで
の様々な催しを継続的に開催することが可能となり、催しの発案や計画はリーダー
たちである30~40代より更に若い世代の成長の場にもなっているようです。

これらソフト面の工夫に加え、まちの特徴でもある『路地文化の継承』と『歩い
て楽しめるまち』を意識した設計計画により土地の規模とまちとのスケール感が
一致したことも土地に馴染む要因となっているように感じます。

シェアハウスCOMICHIの家では、権利者だけでは難しい経営管理、運営、情報
発信などを巻組が一括して請負っています。年代が近い者同士といえどやはり他
人同士、入居時には面接を行う他、生活していく中で低下しがちな『住民個人個
人の意識』を巻組が潤滑油となり程よいバランスを保っています。

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こうしたシェアハウスは現在石巻で活動するNPO関係者や起業家、クリエーター、
そして地方での賃貸契約が難しい海外留学生を中心に利用されており、今後も石
巻の担い手となる20〜30代のエリアバリューを上げる移住者たちを巻き込むこと
により様々な可能性が生まれることが期待できます。

巻組では女川でも一般貸主が事業者の入れ替わりを想定した賃貸経営の動きがある
他、今後は農家民泊やシェアハウスの事業展開を行っている居住者のための応援ツ
アーなどを企画予定しているとのことです。

とにかく、この日のCOMICHI石巻の視察とレクチャからうけた示唆や収穫はとて
も大きなものでした。

つなセンでも、地方コミュニティのこれからの在り方に考えていきながら、空き家
などを活用したシェアハウスや共同建て替えなどのプロジェクト実施について検討
していければと思っています。